免税事業者の請求書の書き方|消費税相当額の記載例と70%経過措置
インボイス未登録の免税事業者は適格請求書を発行できませんが、従来どおりの区分記載請求書は発行できます。記載項目、消費税相当額の書き方、2026年10月から70%になる経過措置、取引先への備考の書き方までを国税庁の一次情報で整理します。
公開日: 2026-08-08
この記事でわかること
- インボイス(適格請求書)に登録していない免税事業者でも、請求書はこれまでどおり発行できる(区分記載請求書)
- 登録番号なしの請求書の記載項目と、源泉徴収・消費税相当額を併記した記入例
- 消費税相当額の請求は適法で罰則もないこと、逆にやってはいけない「誤認される表示」
- 取引先の仕入税額控除の経過措置が 2026 年 10 月 1 日から 80% → 70% に変わること(令和 8 年度税制改正)
結論: 免税事業者の請求書は「区分記載請求書」でこれまでどおり発行できる
**インボイス制度が始まった後も、免税事業者は登録番号のない従来型の請求書(区分記載請求書)をそのまま発行できます。**書けないのは「登録番号」だけで、請求書そのものが無効になるわけではありませんし、取引先が経費にできなくなるわけでもありません。
押さえるポイントは次の 3 つです。
- 書き方: 必須項目は従来どおり。登録番号の欄は空欄にするか、欄自体をなくします
- 消費税相当額: 記載も請求も適法です。ただし「適格請求書と誤認される表示」だけは罰則があるため避けます
- 経過措置: 取引先が受けられる仕入税額控除の割合が、2026 年 10 月 1 日から 80% → 70% に切り替わります(令和 8 年度税制改正で見直し後のスケジュール)
順番に見ていきます。
免税事業者はインボイス(適格請求書)を発行できない
**適格請求書を交付できるのは、税務署長の登録を受けた「適格請求書発行事業者」だけです。**国税庁のタックスアンサー No.6498 は「適格請求書は、税務署長の登録を受けた適格請求書発行事業者でなければ、交付することはできません」と明記しています。登録番号は「T + 13 桁の数字」(法人は T + 法人番号)の形式です(国税庁 タックスアンサー No.6498「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」・2026-08-08 確認)。
基準期間の課税売上高が 1,000 万円以下などの要件を満たす免税事業者は、この登録をしていない限り適格請求書を発行できません。逆に言えば、発行できないのは適格請求書だけで、取引の証憑としての請求書は問題なく発行できます。この従来型の請求書を「区分記載請求書」と呼びます。
免税事業者の請求書の書き方【記載例つき】
**免税事業者の請求書に必要なのは、①発行者の氏名または名称 ②取引年月日 ③取引内容(軽減税率の対象ならその旨)④税率ごとに合計した税込対価の額 ⑤交付先の氏名または名称、の 5 項目です。**この 5 項目は、取引先が経過措置(後述)の適用を受けるために保存する請求書の要件と同じです(国税庁 インボイス制度 Q&A 問 113・令和 8 年 4 月改訂・2026-08-08 確認)。
フリーランスの業務委託報酬で、源泉徴収と消費税相当額を併記する場合の記入例です。
| 項目 | 記載例 | |---|---| | 品目 | 原稿執筆料(4 月分・◯◯特集) 100,000 円 | | 消費税相当額(10%) | 10,000 円 | | 源泉所得税(10.21%) | ▲10,210 円 | | 差引請求額 | 99,790 円 | | 備考 | 当方は適格請求書発行事業者ではありません |
登録番号の欄があるテンプレートを使う場合は、空欄のままにせず欄自体を削除すると、後述の「誤認される表示」の心配がありません。源泉徴収の税率(10.21%・支払金額 100 万円超の部分は 20.42%)は国税庁タックスアンサー No.2795 の区分によります(国税庁 タックスアンサー No.2795・2026-07 確認済み出典の再利用)。
消費税相当額は書いていい?請求していい?
**消費税相当額の記載も請求も適法で、罰則の対象ではありません。**国税庁は「免税事業者が請求書等に消費税相当額を記載したとしても、それが適格請求書等と誤認されるおそれのあるものでなければ、基本的に罰則の適用対象となるものではありません。また、免税事業者であっても、仕入れの際に負担した消費税相当額を取引価格に上乗せして請求することは適正な転嫁として、何ら問題はありません」と明確に回答しています(国税庁「多く寄せられるご質問」問④・令和 8 年 4 月 1 日更新・2026-08-08 確認)。
免税事業者も仕入れや経費で消費税を負担しているので、上乗せ請求は制度上想定された行動です。表記は「消費税」でも違法ではありませんが、適格請求書との区別を明確にする観点から「消費税相当額」と書く実務が広がっています。
一方で、やってはいけないのが適格請求書と誤認されるおそれのある表示です。「T + 13 桁の数字」に類似した英数字や、自分のものではない登録番号を記載した書類の交付は禁止されており、1 年以下の拘禁刑または 50 万円以下の罰金の対象になります(同・国税庁「多く寄せられるご質問」)。登録していないのに登録番号らしきものを書く行為だけが明確なアウトです。
2026 年 10 月から控除割合が 80% → 70% に変わる(経過措置)
**取引先(買手)が免税事業者からの仕入れについて受けられる仕入税額控除の経過措置は、2026 年(令和 8 年)10 月 1 日から「仕入税額相当額の 70%」に切り替わります。**令和 8 年度税制改正で適用期限が 2 年間延長されたうえ、控除可能割合が見直されました(国税庁 令和 8 年度税制改正特集・2026-08-08 確認)。改正後のスケジュールは次のとおりです。
| 期間 | 控除できる割合 | |---|---| | 2023 年 10 月〜2026 年 9 月 | 仕入税額相当額の 80% | | 2026 年 10 月〜2028 年 9 月 | 70%(改正前は 50% の予定だった) | | 2028 年 10 月〜2030 年 9 月 | 50% | | 2030 年 10 月〜2031 年 9 月 | 30% | | 2031 年 10 月以降 | 控除なし |
あわせて、この経過措置には上限が設けられました。1 つの免税事業者等からの課税仕入れの合計額(税込み)が年または事業年度で 1 億円を超える場合、超えた部分には適用できません(2026 年 10 月 1 日以後に開始する課税期間から。改正前の上限は 10 億円)。フリーランスと発注元の通常の取引規模では、この上限に達するケースはまれです。
実務上の注意が期またぎの取引です。どの割合が適用されるかは請求日や入金日ではなく、役務の提供なら「約した役務の全部が完了した日」、物品なら「引渡しのあった日」で判定します(同・Q&A 問 113-3)。2026 年 9 月に納品して 10 月に請求した場合は、9 月完了の取引として 80% 側で扱われます。切替前後の請求書は、取引年月日をいつもより丁寧に書いておくと取引先の経理処理がスムーズです。
取引先への備考の書き方(文例つき)
**備考欄に「当方は適格請求書発行事業者ではありません」と一言添えるのが、切替期の実務としては親切です。**記載義務はありませんが、取引先は請求書を受け取った時点で経過措置の処理(帳簿への「80% 控除対象」等の記載)を判断する必要があるためです(前掲・Q&A 問 113)。
文例はシンプルで構いません。
- 「当方は免税事業者のため、適格請求書は発行しておりません。」
- 「本請求書は区分記載請求書です(適格請求書発行事業者の登録なし)。」
なお、免税事業者からの請求書であることは、取引先の所得税・法人税の経費処理には影響しません。国税庁も、保存書類が適格請求書か区分記載請求書かは「必要経費性・損金性に影響を与えるものではありません」と回答しています(前掲・「多く寄せられるご質問」)。影響があるのは消費税の仕入税額控除の部分だけです。
インボイス登録すべきか迷ったら
**登録するかどうかは、「主要な取引先が課税事業者か」と「値決めへの影響」で判断するのが基本です。**取引先が課税事業者中心なら、2026 年 10 月の 80% → 70% 切替は取引先の負担が増えるタイミングにあたります。一方、取引先が消費者や免税事業者中心なら、急いで登録する必要性は高くありません。
登録した場合の負担をやわらげる措置も用意されています。令和 8 年度改正では、登録により免税事業者から課税事業者となった個人事業者について、令和 9 年分・令和 10 年分の消費税の確定申告で納付税額を売上税額の 3 割とできる特例が設けられました(前掲・令和 8 年度税制改正特集)。判断に迷う場合は、この特例の適用可否も含めて税理士や税務署に相談してください。
免税事業者の請求書を無料で作るなら
**スイスイ請求なら、会員登録なしでブラウザから区分記載請求書を作成できます。**登録番号の欄は空欄のまま印字されない設計で、消費税相当額・源泉徴収の欄も品目行と備考欄で自由に書き分けられるので、この記事の記入例のとおりの請求書がそのまま作れます。
まとめ: 免税事業者の請求書は「5 項目 + 備考一言」で堂々と発行する
- 免税事業者は適格請求書を発行できないが、区分記載請求書はこれまでどおり発行できる
- 必須は 5 項目。登録番号の欄は空欄でなく削除し、誤認される表示だけは避ける(罰則あり)
- 消費税相当額の記載・請求は適法。「消費税相当額」表記で区別を明確に
- 2026 年 10 月 1 日から取引先の控除割合が 80% → 70% に切替(令和 8 年度改正後のスケジュール)。期またぎは完了日・引渡日で判定
- 備考に「適格請求書発行事業者ではありません」と一言添えると取引先の経理が迷わない
よくある質問
Q1. 免税事業者が消費税を請求するのは違法ですか?
違法ではありません。国税庁は、消費税相当額を取引価格に上乗せして請求することは「適正な転嫁として、何ら問題はありません」と回答しています。罰則の対象になるのは、適格請求書と誤認されるおそれのある表示(T + 13 桁類似の番号の記載など)をした場合だけです。
Q2. 登録番号の欄はどうすればいいですか?
空欄のままより、欄自体を削除するのが安全です。誤って番号らしき英数字が入ると「誤認されるおそれのある表示」(1 年以下の拘禁刑または 50 万円以下の罰金の対象)に近づくため、登録番号欄のないテンプレートを使ってください。
Q3. 2026 年 10 月からの 70% への切替で、売手の免税事業者がやることはありますか?
請求書の書き方自体は変わりません。変わるのは取引先(買手)の控除割合です。切替前後は取引年月日(役務の完了日・物品の引渡日)を明確に書き、備考で免税事業者である旨を伝えると、取引先が 80% と 70% のどちらを適用するか迷いません。
Q4. 取引先から「インボイスがないと取引できない」と言われたら?
まず経過措置の存在を伝えてください。2026 年 10 月以降も仕入税額相当額の 70% は控除でき、控除できなくなるのは 2031 年 10 月以降です。そのうえで登録の要否は、取引の継続性と値決めへの影響を踏まえて判断します。個別の交渉・税務判断は税理士等の専門家にご相談ください。
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※ 本記事は一般的な情報の提供を目的としており、税務・法務に関する助言ではありません。制度の個別の取り扱いは国税庁の案内や税理士等の専門家にご確認ください。