出演料の請求書の書き方|源泉徴収と単価×人数の記入例
出演料の請求書は、単価×人数の明細と、報酬額と消費税を分けた源泉徴収10.21%の差引で作れます。15,000円×6名ほかで小計120,000円・消費税12,000円・源泉12,252円・差引119,748円の記入例つき
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出演料の請求書で先に決まるのは、1 人分の出演料と人数です。明細の単価に 1 人分の金額、数量に人数を入れて本番とリハーサルの行を分け、小計に消費税を乗せ、税抜の報酬額に対する源泉徴収税額 10.21% を差し引いた差引請求額まで書けば、バンドやユニットの代表者が全員分をまとめて請求する 1 枚になります。源泉徴収を計算して納めるのは支払側なので、請求書の源泉の行は支払側の計算と揃えるために置きます。
この記事でわかること
- 1 人 ◯◯ 円 × ◯ 名は、単価と数量に分けて明細 1 行に落とせること
- バンド名だけで出すと支払側が源泉徴収の判断に困るため、代表者の個人名を併記すること
- 消費税を分けて書けば、源泉徴収の対象が税抜の報酬額だけになること
- 事務所経由か直接契約かで、請求書を出す人が変わること
国税庁のタックスアンサーと所得税基本通達の原文を手がかりに、記入例から順に見ていきます。
出演料の請求書は「単価=1人分・数量=人数」で明細を作り、消費税と源泉徴収を分けて書く【記入例】
出演料の請求書は、明細の単価に 1 人分の出演料、数量に人数を入れ、消費税と源泉徴収税額を別の行に分けて書けば作れます。ライブでもイベントでも配信番組でも、MC やナレーションのような出演でも、行の作り方は変わりません。
| 品目 | 単価・数量 | 金額 |
|---|---|---|
| 出演料(10月3日 本番・出演者6名) | 15,000 円 × 6 名 | 90,000 円 |
| 出演料(10月2日 リハーサル・出演者6名) | 5,000 円 × 6 名 | 30,000 円 |
| 小計 | 120,000 円 | |
| 消費税(10%) | 12,000 円 | |
| 税込合計 | 132,000 円 | |
| 源泉徴収税額(120,000 円 × 10.21%) | ▲12,252 円 | |
| 差引ご請求金額 | 119,748 円 |
発行日・請求書番号・「バンド ◯◯ 代表 佐藤 太郎」の発行者欄・備考は図のとおりです。1 人 15,000 円と 5,000 円は説明のために置いた数字で、出演料の相場を示すものではありません。差引の 119,748 円は支払側の計算と揃えるための数字で、最終的な税額は支払側の処理で決まります。
出演料の請求書に必要な項目
出演料の請求書に載せる項目は、受け取る側が仕入税額控除のために保存する適格請求書の記載事項 6 項目に、請求書番号・振込先・お支払期日を加えた形です。6 項目は次のとおりです(国税庁 タックスアンサー No.6625・2026-08-25 確認)。
- 発行者の氏名または名称と、登録番号
- 取引年月日
- 取引の内容
- 税率ごとに区分して合計した対価の額と、適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 交付を受ける事業者の氏名または名称
出演料では、取引年月日は公演日、取引の内容は「出演料(10月3日 本番・出演者6名)」のように公演名と出演日で特定します。件名にもフェス名と公演日を入れます。登録番号は「T + 13 桁」で、未登録ならこの欄は置きません。発行者の欄はバンド名やユニット名だけで止めず、代表者の個人名を添えます。屋号や開業届がなくても個人名で出せる点は副業会社員の請求書の書き方のとおりです。お支払期日は、出演契約書や依頼メールに書かれた日をそのまま転記します。
複数人の出演料をまとめて請求するときの書き方(単価×人数・誰の名前で出すか)
メンバー 6 名分の出演料を代表者が 1 枚で請求するなら、単価に 1 人分の出演料、数量に人数を入れ、本番とリハーサルは行を分けます。「1 人 15,000 円で 6 名」を「出演料 90,000 円」の 1 行に丸めてしまうと、支払側が単価と人数を検算できません。
記入例の 1 行目が本番(15,000 円 × 6 名)、2 行目がリハーサル(5,000 円 × 6 名)で、小計 120,000 円に消費税 12,000 円が乗ります。誰が出演したかは、備考に「出演者: 佐藤太郎・鈴木一郎ほか 4 名」のように書きます。行数が増えたときの 1 枚へのまとめ方はまとめ請求書(合計請求書)の書き方を参照してください。
誰の名前で出すかは、支払側の源泉徴収の判断に直結します。国税庁は、支払を受ける者が劇団などの団体で個人か法人かが明らかでない場合、団体として独立して存在していることを支払を受ける者が明らかにしたときは法人として、そうでなければ個人として取り扱う、という支払側の基準を示しています(国税庁 タックスアンサー No.2792 注意事項・2026-08-25 確認)。「バンド ◯◯」とだけ書かれた請求書では、支払側がこの判断をする材料を持てません。発行者欄に代表者の個人名を併記し、明細に出演者 6 名という人数を書くことが、支払側が個人への支払として源泉徴収を計算する材料になります。団体か個人かを最終的に決めるのは支払側と税務署で、受け取った出演料をメンバーに分けるときの各自の税務は税務署か税理士に聞いてください。
人数分の明細ができたら、次に決まるのは、その金額に消費税を乗せるかどうかです。
出演料に消費税は上乗せする?(税込・税抜の確認)
依頼された「1 人 15,000 円」が税込か税抜かを先に確認し、税抜なら小計に消費税 10% を上乗せして、分けて書きます。「税別で 15,000 円」と伝えてあっても、請求書に 90,000 円とだけ書くと税抜か税込かが 1 枚から読めず、後で話が食い違います。
消費税がかかるのは、事業者が事業として対価を得て行う国内の資産の譲渡等で、「事業として」とは反復、継続かつ独立して行うことを指します(国税庁 タックスアンサー No.6105・2026-08-25 確認)。継続してライブ活動や出演を行っている出演者なら、出演料はこの当てはめで課税取引として扱うのが通常で、記入例も小計 120,000 円に消費税 12,000 円を乗せています。年に 1 回だけ頼まれて出演したような場合に「事業として」に当たるかは個別の当てはめになるので、判断がつかなければ税務署か税理士に聞いてください。
登録番号のない免税事業者でも、消費税相当額を含めた税込の価格で請求すること自体はできます。ここで 120,000 円と 12,000 円を分けて書いておくことが、次の源泉徴収の計算にも効いてきます。
出演料の源泉徴収はどう書く?(10.21%・税抜額が対象)
出演料は源泉徴収の対象になる報酬・料金で、報酬額と消費税を分けて書けば、税抜の 120,000 円 × 10.21% = 12,252 円が源泉徴収税額になります。国税庁が居住者への支払について源泉徴収の対象として挙げる区分の 5 番目が「映画、演劇その他芸能(音楽、舞踊、漫才等)、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金」です(前掲 No.2792)。このページは支払側の義務を説明したもので、出演者側に税額の計算義務があるわけではありません。
同じページの注意事項は、報酬・料金等の額と消費税等の額が請求書等で明確に区分されているときは、報酬・料金等の額だけを源泉徴収の対象にして差し支えないとし、インボイス制度の開始後もこの取扱いは変わらないとしています(前掲 No.2792)。記入例で 120,000 円と 12,000 円を分けているのはこのためで、税込 132,000 円をひとまとめに書くと、原則として 132,000 円全体が対象になります。税率は講師料と同じ 10.21% です。求めた税額に 1 円未満の端数があれば切り捨てます(国税庁 タックスアンサー No.2795・2026-08-25 確認)。100 万円を超える場合の税率と、手取りで合意したときの逆算は、講師料の請求書の書き方に譲ります。
「5 万円以下なら源泉徴収はいらない」と聞いて、1 人 15,000 円の出演料は対象外だと受け取る人がいます。国税庁が 1 回 50,000 円以下なら源泉徴収をしなくてもよいとしているのは、懸賞応募作品などの入選者に対する賞金や、新聞・雑誌の投稿欄への投稿の謝金など、原稿料に含まれるものについてです(前掲 No.2795)。出演料にこの規定はなく、1 人 15,000 円だからといって対象から外れるわけではありません。源泉徴収を行うかどうか自体は支払側の義務と体制で決まるので、個人が主催する小さな催しでは、請求書を作る前に源泉の有無を主催者に聞いておきます。備考に「源泉徴収税額は報酬額(税抜)を対象に計算しています。貴社の処理と異なる場合はご連絡ください」と添えておくと、差引額が違ったときに話が早く済みます。
源泉の行まで書けました。ここで免税事業者の方が手を止めるのが、登録番号の欄です。
免税事業者・インボイス未登録の出演者はどうする?
登録番号がない出演者でも、出演料の請求書は出せます。適格請求書を交付できるのは登録を受けた事業者に限られますが(前掲 No.6625)、未登録なら請求書を出せない、という決まりではありません。登録番号の欄を置かず、宛名と公演日、品目、金額、発行者を書いた区分記載の請求書として渡します。未登録の請求書での消費税の行の扱いは免税事業者の請求書の書き方を参照してください。
主催者側では、仕入税額控除に差が出ます。未登録の出演者への支払でも税額の一部を控除できる経過措置について、令和 8 年度の税制改正は期限を 2 年延ばし、控除できる割合を 8 割から 7 割・5 割・3 割へ段階的に下げました。未登録の同じ相手からの税込の課税仕入れがその年または事業年度で 1 億円を超える部分は、この控除の対象外です(国税庁 令和 8 年度税制改正特集・2026-08-25 確認。適用は令和 8 年 10 月 1 日以後開始の課税期間から)。主催者が登録の有無を聞いてくる背景はここにあり、登録すべきかは出演の頻度と取引先で変わるので、税務署か税理士に相談してください。
スタジオ代・交通費などの実費はどこに書く?
出演者が立て替えたスタジオ代や交通費を請求するなら、出演料とは別の行に分け、備考に実費であることを書きます。国税庁は、謝礼や車代などの名目で支払われても実態が報酬・料金等と同じなら源泉徴収の対象になる一方、支払者が交通機関やホテルへ通常必要な範囲の交通費や宿泊費を直接支払った場合は報酬・料金等に含めなくてもよい、としています(前掲 No.2792 注意事項)。
つまり、主催者がスタジオや交通機関に直接払った分は請求書に載りません。出演者側が立て替えて載せる分は、「車代」と名目を変えても源泉の対象から自動的に外れるわけではなく、含めるかどうかは、実態に応じて支払側が判断します。同じ 1 枚に載せるか別の請求書にするかは支払側の希望に合わせ、どちらでも出演料の行と実費の行を混ぜないのが要点です。立替分の行の作り方と領収書の添え方は立て替え経費の請求書の書き方に譲ります。
事務所経由と直接契約で請求書を出す人は変わる?
請求書を出すのは、出演先と契約している人です。所得税基本通達は、芸能人の役務の提供を内容とする事業を営む個人(個人の芸能事務所)が関わる出演について、契約と支払の形に応じて課税関係を 3 つに分けています(国税庁 所得税基本通達 204-28の5・2026-08-25 確認)。
- 出演先が事務所とも出演者とも契約し、報酬を分けてそれぞれに支払う形: 事務所が受け取る分も出演者が受け取る分も、それぞれの段階で源泉徴収が行われる
- 出演先が事務所とだけ契約し、全額が事務所に支払われる形: 事務所が受け取る段階で全額について源泉徴収が行われ、出演者は事務所から報酬や給与を受け取る
- 出演先が出演者とだけ契約し、全額が出演者に支払われる形: 出演者が受け取る段階で全額について源泉徴収が行われ、出演者が事務所に払うあっせんの手数料には源泉徴収を要しない
この 3 分岐は事務所が個人事業主である場合の通達で、事務所が法人のときの源泉徴収の扱いは本記事では扱いません。ただし「出演先と契約している人が請求書を出す」という整理は同じです。本記事の記入例は 3 つ目の、出演者(代表者)が出演先と直接契約している形です。出演先が事務所とだけ契約している公演なら、請求書を出すのは事務所で、出演者が出演先へ請求書を出す場面にはなりません。事務所に所属しながら個人で受けた出演の扱いは所属契約の内容で変わるので、この分け方を手がかりに事務所と契約書を確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 税別 15,000 円と伝えたのに、入金が 1 人分に足りません
源泉徴収 10.21% が引かれているためです。記入例では税込合計 132,000 円に対して差引は 119,748 円で、差の 12,252 円は支払側が源泉徴収して納める税額です。1 人あたりの手取りを揃えたいなら、手取り額から逆算した金額を報酬額にする必要があります(逆算の手順は講師料の請求書の書き方の手取り契約の節)。
Q2. 消費税の端数はどこで処理しますか?
端数処理は明細行ごとではなく、税率ごとに合計した対価の額に対して 1 枚につき 1 回行います(国税庁 インボイス Q&A 問 57、令和 6 年 4 月改訂版)。記入例も、本番とリハーサルを足した小計 120,000 円に対して消費税 12,000 円を 1 回で出しています。
Q3. 入金後に領収書を求められたら、但し書きはどう書きますか?
請求書の件名と揃えて「出演料(◯◯フェス 10月3日公演)として」のように書きます。振込で支払われた出演料は振込の記録が残るため、領収書を求められないこともあります。
Q4. 配信やアーカイブ販売の対価も、出演料に含めて請求しますか?
配信やアーカイブの対価は出演料とは別契約になることが多く、扱いも一律ではありません。出演契約書に配信の条項があるかを確認し、別建ての取り決めがあれば請求も分けます。
Q5. 出演者側が合同会社などの法人のときは?
本記事は個人への支払を前提に書いています。法人が出演料を受け取る場合は扱いが異なるため、税務署か税理士に確認してください。
Q6. 発行した請求書の控えは、いつまで保存しますか?
交付した適格請求書の写しには保存義務があり(国税庁 タックスアンサー No.6498・2026-08-21 確認)、保存期間は 7 年間です。起算点は交付日の属する課税期間の末日の翌日から 2 か月を経過した日になります(国税庁 インボイス制度 Q&A 問 79・2026-08-21 確認)。
まとめ: 出演料の請求書は「1人分×人数・代表者名・消費税と源泉の分離」で整う
- 出演契約書や依頼メールで、1 人分の出演料が税込か税抜か・源泉徴収の有無・お支払期日を確認する
- 単価に 1 人分の出演料、数量に人数を入れ、本番とリハーサルは行を分ける
- 発行者はバンド名に代表者の個人名を添え、備考に出演者名を書く
- 小計・消費税・源泉徴収税額・差引ご請求金額の順に書き、源泉の最終額は支払側の処理に合わせる
出演料の請求書を公演のたびに1枚作るなら
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※ 本記事は一般的な情報の提供を目的としており、税務・法務に関する助言ではありません。出演料に対する源泉徴収の要否・団体か個人かの取扱いを含む最終的な判断は、支払者の処理と所轄の税務署・税理士等の専門家に、出演契約書や所属契約の個別の解釈は、取引先・事務所・弁護士等にご確認ください。
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